1、「マイライフ」
1993年に、アメリカで作られました、30代で会社を経営するボブを、バットマンシリーズやロボコップでおなじみのマイケル・キートンが、深みのある演技でしんみりと演じています。
愛する妻ゲイルの役で、ニコール・キッドマンがしっとりと、その妻を演じます、ある日、突然癌の宣告を受ける、幸せの絶頂から恐怖のどん底に突き落とされる、耐えることが難しい男の葛藤をキートンが巧みに演じます。
どちらかというと、シニカルでコミカルな役柄が多かったキートンが、この映画では人間味のあるリアルな感情を表現豊かに演じます、少し、ヒロインのキッドマンの迫力ある演技に押され気味な感じになってしまっていますが、そこは貫禄で対抗しています。
キャストの対比が若干ミスマッチのような気がしますが、全体的によくまとまっています、末期がんに侵されながらも、生きることへの執念と、まだ見ぬ生まれ来る我が子への愛情が、溢れんばかりに伝わってきます。
中国系の精神治療医が、何とも言えぬいい味を出しています。人生の味わいを再確認する良い映画なので是非、見ていただきたい作品です。
2、「グリーンマイル」
1999年、12月に公開されました、大ベストセラー作家、スティーブン・キングの原作を忠実に再現し、ファンタジーの代名詞と呼ばれるくらいの傑作に仕上げました。
監督は、こちらも今やハリウッドには欠かせない名監督のフランク・タラボンがメガホンをとっています。
1932年の刑務所を舞台に、数々の奇跡が、見る人の心を感動させます、これほどネタバレさせたくない作品はありません。
名作は数に限りがあります、とにかく一度見ていただきたいと思う作品です。
劇中で、ある女性の身に奇跡がおきます、大変重い脳腫瘍を患うのですが、それが思いもよらない形で解決していきます。命の重さ、尊さ、生きるとは、贖罪とは、重いテーマを正面から掲げ、脇を固める名優たちが、感動的な名演技で演じ切ります。
主役のポール演じるトム・ハンクスは勿論のこと、その後の大作に出まくる名優達の心温まる演技は必見です。
人の命、生きることの無慈悲さ、生命の根源的なさがみたいなものを感じられる映画かもしれません、是非、作品に触れていただきたいと思います。
3、「 余命一か月の花嫁」
2007年にTBSで放送されたドキュメンタリー番組で、実際に合った患者を取り上げ、話題になりました。
24歳で末期の乳がんの告知を受け、わずか一か月で人生の幕を閉じてしまう、悲劇的な女性の話です、公開当初は、実際にあったフィクションで、それほど時間がたたない内に、ほぼドキュメンタリー的に映画が公開されたことが、ややショッキングに感じられました。
悲劇のヒロインを榮倉奈々さん、相手役を瑛太さんが演じました、2009年5月に公開され、美しくはかない一人の女性が、ウエディングドレスを執念で纏う姿が視聴者の心を強く引き付けました。
増えているがん患者の中でも、乳がんの罹患率は戦後、劇的に上がっているものの一つです、食の欧米化、生活様式の変化、最近でも乳がんで大変な闘病を強いられる某有名人の方が沢山注目されています。
余命一か月と宣告された時の心の葛藤は想像に難くありませんが、言語に尽くしがたい試練があったはずです。
癌という病気と付き合うことに直面すると、即、死を意識し隣りあわせとなるのかもしれません。夫婦の方、カップルの方に是非、見ていただきたい作品です。
4、「死ぬまでにしたい10のこと」
原題はマイ・ライフ・ウィザウト・ミーでカナダ・スペインの合作映画です。2003年に公開されました、独立系の映画を中心に活躍していた、サラ・ポーリーという女優さんがヒロインです。
この女優さんがとにかく可愛らしいです。何か、どこか、チャップリンの女性バージョンのように、可愛く、フェミニンで、かつ女性の存在意義を劇中で存分にアピールしています。
彼女(役名がアン)も比較的順調にいっていた人生のど真ん中で末期がんと宣告されてしまいます。その時、家族は、旦那は、子供は、そして何よりも、一人の女性としての残された人生は、という余命宣告を受けた人特有の究極の選択を迫られます。
よく邦題と原題が相違している映画がたまに存在しますが、こちらはどちらも妙です、カナダとスペインの合作映画の良い部分として映画云々しすぎていないところが、とても良い点です。
見る側も肩の力を抜いて見れるとても良い作品です、こちらも女性特有の癌を扱った物語ですが、この作品は是非、ご家族皆様で見るべき映画であると思います。
5 、「 世界の中心で愛を叫ぶ」
セカチューブームで一躍大ブームになりました。2004年に公開されなんと650万人もの来場者がありました。
ヒロインは柴咲コウ、相手役は大沢たかおさんが演じました。大ヒットした映画と共に、関連書籍も売れに売れ、原作は結局300万部以上セールスされました。
主題歌を歌った平井堅さんの【瞳を閉じても】大ヒットし、セカチューブームはアジア全体に広がりました、今を時めく女優の長澤まさみさんの出世作ともなりました。
その長澤さん演じるアキが17歳で血液の癌である白血病で、この世を去ってしまいます、癌の形態もケースも千差万別ですが、小児がんほど、いたたまれないものはありません。
17歳といえば、まだ人生の入り口の入り口です、全てがここから始まると言ってもよいかもしれません、どんな映画でも病気事態にフォーカスしすぎるというものはありませんが、健康であった17歳の癌細胞で身も心も激しく、痛みつけられたに違いありません。
生きていたい、命をつないで、愛する人と幸せな青春を謳歌したい、題材が高校生なので本来あるその姿とのギャップが激しく、物語にくぎずけになります。
限りある人生、だからこそその一瞬を大切にしたいと、強く思わずにはいられない映画です。恋愛に臆病になっている男女、互いの気持ちを量りかねているカップルの方にも是非、見ていただきたい映画です。
6、「 最高の人生の見つけ方」
原題はバケット・リストです。監督はアフュー・グッドメンやスタンドバイミー、アメリカン・プレジデントなどを撮ったロブ・ライナーで2007年12月に公開されました。
ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンのダブルキャストで作られました。両巨頭に関しては、今更ながら紹介するまでもないかもしれませんが、両方もハリウッドではなくてはならない、出演している作品も数知れません。
出演作品を総じて見ても、比較的シリアスな、大作にどちらも頻繁に出演しています、この映画はコメディーです。
ニコルソンもフリーマンも余命6か月の診断を受ける悲劇的でショッキングな導入から始まります。そこで、悔いのない残りの人生を、偶然会った病室で、二人のぶっ飛んだ老人が残りの人生で、やり残したことをハチャメチャにやっていく。
周りが何と言おうが、悔いを残したまま死ぬことは到底受け入られない、強い意志で最後までバケットリストを制覇しようとします。
具体的に癌という病名がでず、診断を下されるわけではありませんが、恐らく不治の病で余命6か月ですので、想像に難くないと思われます。
人生は長い短いでその価値が決まるものではありません、一瞬でも、満足した時間を持てたのか?
60年だか、70年だか、はたまた100年だかわからないが、過ごしてきた人生の中で自分は満足だ!と確信を持って言える人生を過ごしてきたといえるのか?
そんな問いかけを、この映画は見る私達に投げかけてくれているように感じます。
癌になって絶望と共に落ちてゆくのか、残りの人生が決まり、ただ何となく漠然と生きている人たちの人生よりも遥かに充実した、噛みしめた人生を送ることが出来ると達観するのかは、その人の受け取り方一つで全てが変わります。
この映画はくよくよして歩くのも、悠々と爽快に歩くのも人生はどうせ歩いて行かなくてはならないんだ、と教えてくれているように感じます。ベテランの味わい深い演技に興じながら、そんなことを考えてもよい映画だと思います。
7、「きっと星のせいじゃない」
原題はザ・フォルト・イン・ アワー・スターズです、一昨年の2014年に公開されました。ジョシュ・ブーンさんという37歳の若い監督さんです。この監督さんの二作目の映画です。
ヒロインの女性が末期癌、相手役が骨肉腫を患っている男女のバリバリのラブストーリーです。
この映画は、その制作費の安さに拘わらず、トータル3億ドルを稼ぎ、大ヒットしました、ローラ・ダーンやウイリアム・デフォーという脇を固める役者陣も素晴らしい配役となっています。
すいません、メインキャストのお二人はよくわからない俳優さんですが、なるほどとても爽やかで良い役者さんです。
少しベタな展開になりがちですが、世界中で話題になった映画だけあってよくできています。
この映画も若い男女の癌がテーマとなっていますが、何度も言いますが若い人の癌(小児がんも含めて)は進行も早く、悪くなるケースはとても忍びないものです。
病気に日々打ちのめされることに、苛立ちと葛藤を抱えながら、前に進もうとする。
恋愛と闘病を両立させることの難しさを思い知らされながら、それでも人として幸せでいたい。また、愛する人を幸せにしたい。若い二人の美しくも儚いラブストーリーが展開されていきます。
人は残された時間が決まってしまった時に、どんな選択をするのか?
健康でいれば思いもしない発想や思考を持つことがあるのか?
病気になる映画は数知れずありますが、それらの映画を見るたびに、いつも考えさせられます。
この映画も、決して後ろ向きにならず、前を向いて進む、人生のきずきを大切にしていく、そんな映画になっています。
残された時間で目一杯人を愛そう、なんて思う人に是非、見ていただきたい作品です。
8、「はなちゃんのみそ汁」
2015年暮れに公開されました。主役の安武千恵さんに広末涼子さん、旦那さんの安武信吾さん役に滝藤賢一さんが配役されました。主題歌を一青窈さんがしっとりと歌っています。
新聞記者の信吾は音大生の千恵と出会う、二人は愛し合うが、千恵に乳癌が見つかる。それでも信吾は決意し、二人は結婚するが、その後千恵に転移の試練が襲いかかる。
千恵は妊娠し、子供を望むが、医師が転移が進み再発のリスクが上がることを理由に反対する。それでも長女はなを出産し、幸せな生活を送ろうと頑張っていくが・・・。
題名のはなちゃんはこの二人の間に生れ出てくる子供のことです。この映画のコピーにも出てきますが、食べるとは生きること、生きることは、命を繋ぐこと。という心打たれるフレーズが流れてきます。
映画を全て見終わった時に、いつも感心させられますが、原題も邦題も全部、配給側が意図をもって名付けします。
この映画も、題名がとても意義深いもので、この映画全体の世界観を上手に描写しています。
広末さんは実際に3人のお子さんを育てられていますが、はなちゃん役の赤松えみなちゃんとの絡みは、何とも微笑ましいものです。
滝藤賢一さんも、最近のドラマや映画に頻繁に出演されています。この映画のコピーに先に触れてしまいましたが、この映画はこのフレーズが全てを物語っています。
生きることは食べること、食べるという根源的なところから、ハートフルに暖かく物語が展開していきます。
家族の絆、生まれるものと、亡くなるもの、そんなことを普段考えたりする方に、是非、この映画を見て欲しいと思います。
9、「50・50」
2011年9月に公開されました、監督はジョナサン・レビン。脚本は自身も癌を患い、その体験をこの脚本に乗せたウィル・ライザーです。
主役は、今、ノリにのっている、ジョセフ・ゴードン・レビットです。11歳で、リバーランズ・スルーイットの子役として若き頃のノーマンを見事に演じました。
そこからテレビやドラマ、話題作に立て続けに出演しています。米コロンビア大学を卒業していることから、かなりのインテリであることが伺えます。
筆者はインセプションやダークナイト・ライジングなどの個性溢れる演技がとても印象に残っています。
好きな俳優、気に入った役者の出演作をトレースするのは、映画を嗜む方法の一つです。お勧め致します。
内容は、ジョセフ演じるアダムが、神経肉芽腫という難病(脊椎癌)に侵され、そこから家族や恋人、まわりで彼をサポートする人達との交流が描かれています。
題名の50・50はこの癌に侵されて生存できる確率のことです。
劇中でアダムの親友が「なんだ!50パーセントなら、ベガスで大勝できるぜ!」と、言って茶化す場面があります。
が、なるほどこの映画も、病気によりとことんまで暗く、奈落の底に突き落とすだけではなく、そこかしこに、楽観的に楽しく、若者らしく、人生を目一杯謳歌しよう!とのメッセージが込められています。
今、旬のジョセフ・ゴードン・レビットの演技を是非、堪能していただけたらと思います。
10、「うさぎ追いし 山極勝三郎物語」
2016年に公開されました。山極勝三郎という人物が、成し遂げる偉大な功績を記す映画です。
山極勝三郎なる名を聞いた人は、おそらくほぼいないのではないでしょうか。この山極勝三郎は、上州上田市に生まれ、そこから東京の帝国大学医学部に進み、癌の発生、仕組みを解明しようと奮闘します。
自身も結核に侵されながら、癌研究に命を削って取り組み、あともう少しというところで急逝していまいます。
長く生きていれば、ノーベル賞をとってもおかしくないと言われた偉大な人物です。癌は現在でも年間約37万人の方が亡くなっています。
約100年も前から癌撲滅のために命を捧げた人物が存在していたことは、日本人であれば周知していなければならないことのように思います。
今でさえアイ・ピー・エス細胞だとか、遺伝子治療だとかがうたわれていますが、その当時は今ほど技術の革新が進んではいない時代です。
勿論、コンピュータも携帯電話もない時代に、これほど先鋭的に癌の研究に取り組み、治療の道標を確立された功績は、誰人も追随出来ないものです。
日本の上田における話題は専ら真田丸となっているようですが、真田幸村も偉大ではありますが、この山極勝三郎も忘れてはならない人物です。
命を捧げ、癌の苦しみから人々を解放するべく起ちあがった名もない日本人の超スーパーな物語を是非、私達日本人は記憶にとどめておくべきだと強く感じます。
ライター コウジ
フリーのデベロッパーをやっています。ワクワクドキドキの毎日を過ごしていきます。