がん治療は、新しい免疫療法「オプジーボ」の誕生で劇的に変わる!

■オプジーボとは?

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引用元 http://toyokeizai.net/articles/-/134389

オプジーボとは、がん治療の新しい免疫療法のことです。これまでのがんの治療法は、手術、放射線療法、抗がん薬治療の3つを主に行われてきましたが、近年、医学療法の研究が進んだことで、新たにがん治療の4つ目の治療法として「免疫チェックポイント阻害薬」=「抗PD-1抗体:オプジーボ」が免疫療法として加わり、2014年7月に薬剤として承認・認可されました。

免疫療法とは、病原体やがん細胞といった異物を排除する機能を高めることが主体で、そもそも人体に備わっている免疫システムに働きかけて、自分の力でがんを退治させるという治療法です。

これについて、慶應大学医学部教授で先端医科学研究所所長は「オプジーボは免疫治療薬の一種なのですが、これまでの免疫治療薬とは、仕組みが全く違います。

これまでの免疫療法は科学的な根拠が乏しく、効果の怪しいと思われるものがほとんどでしたが、オプジーボは科学的に効果があることが証明されている薬です。」と熱弁するほど。

今後のがん治療の発展に最も期待されている治療薬です。

■がん細胞は巧妙な嘘信号を発信しながら増えていく

病原体やがん細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)という免疫細胞があり、このキラーT細胞は活性化しすぎによる自身の暴走を防ぐために、細胞の中にブレーキ役としての働きを持つ分子をいくつか備えています。

これが「免疫チェックポイント」と呼ばれるもので、がん細胞は免疫からの攻撃を避けるためにこれをうまく利用します。

体内のがんを感知したキラーT細胞が、自動車の如くアクセルを踏んでがん細胞を退治しに近付いていくのですが、がん細胞は非常に巧妙で、キラーT細胞が近付いてくると「攻撃の必要はない」という嘘の信号を送り、キラーT細胞の攻撃を弱めてしまいます。このブレーキ作用のおかげで、がん細胞は生き延びることができます。

そこで、T細胞が本来の力を発揮してがん細胞を攻撃できるように、免疫チェックポイントの働きによるブレーキ作用を阻害する薬の開発が進められ、現在では新たながん治療法として効果が認められるようになりました。

■ブレーキ作用を外す、抗PD-1抗体

がん細胞はPD-L1、それを退治するキラーT細胞はPD-1というブレーキ役の分子をそれぞれ持っています。この2つが手を結んでしまうと、前途の通りの免疫チェックポイントが働き、キラーT細胞の攻撃にブレーキがかかってしまいます。

オプジーボは、この2つの分子が結合しないようにする「抗PD-1抗体」を含んでいます。そのため、オプジーボが効いてくると、キラーT細胞はがん細胞による偽の信号に惑わされずブレーキが解除され、アクセル全開でがん細胞を攻撃することができるのです。

これまでは、キラーT細胞のアクセル部分の強化を第一に考えられた免疫療法がほとんどでしたが、どれだけ強化しても結局ブレーキ作用によって力が減少してしまうことがずっと懸念されていました。

しかし、発想を変え、そもそものブレーキ作用を外してしまおうと考えで開発されたのがオプジーボです。従来のものとは段違いに効果がみられる免疫薬が誕生したのです。

2013年には、世界的な科学雑誌の「サイエンス」が、科学界における最も画期的な事象を決める「今年一番のブレイクスルー」にこの免疫療法を選んだことで、一般的にも認知されるようになりました。

■厚労省も認めるオプジーボ

日本人の10万人に1人と言われる、悪性のがん腫瘍メラノーマの治療に関しては、「一にも二にも手術」という風潮で、手術でがんが取り除けないときは、抗がん剤を使うしかなく、これが30年以上進歩していないという状況でした。

そんな常識を打破したのがオプジーボで、日本で最初に保険適用薬として認可されたのは、2014年7月でした。この時の治療対象となったがんが、メラノーマだったのです。

その後、2015年の12月には、厚労省は切除不能な肺がん(非小細胞肺がん)の治療にオプジーボの使用を認可するほど、その効果の認知はどんどん広められていきました。

特に、日本人の肺がん患者の85%は、非小細胞肺がんだと言われています。今後、がんの治療現場で本格的にオプジーボが使用されることが確実となりました。

■オプジーボ治療を受ける条件

オプジーボ治療を受けれる患者の条件は、手術による治療が難しい患者であることです。

これとは逆に、オプジーボの治療を受けることができない場合は、オプジーボに含まれている成分に対して、以前アレルギー反応(気管支けいれん、全身性の皮膚症状、低血圧など)を起こしたことがある人です。

さらに重いアレルギー反応が出てしまう可能性が考えられるため、オプジーボの治療は受けられません。

また、上記以外の理由でもオプジーボの治療を慎重に検討しなければならない場合として、甲状腺機能異常症や関節リウマチ、1型糖尿病などの「自己免疫疾患」にかかったことがある方や、空気を取り込む肺胞という器官が炎症を起こす「間質性肺疾患」にかかったことがある方です。これらに該当する場合は、医師とよく相談した上で治療を受けるかどうか判断しましょう。

■副作用はあるの?

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これまでの化学療法や放射線療法は、がん細胞を攻撃する際に、がん細胞だけでなく正常な細胞も攻撃してしまうため、副作用が強く出る傾向があります。

副作用が懸念されるのは、オプジーボ治療も同じことです。その中でも、注意したい症状の例として挙げられるものをまとめました。

【間質性肺疾患】

空気を取り込む肺胞が炎症を起こし、炎症が進むことで肺胞が硬くなって空気を十分に取り込めなくなり、命に危険が及ぶおそれがあります。

【重症筋無力症、筋炎】

神経から筋肉への情報の伝達がうまくいかなくなる病気です。筋肉の炎症を伴うことも。症状が急激に悪化すると息がしにくくなることもあります。

【大腸炎、重度の下痢】

下痢や、大腸に炎症が起こる大腸炎を発症することがあります。排便回数の増加、腹痛、血便などの症状とともに、発熱を伴う場合もあります。

【1型糖尿病(劇症1型糖尿病を含む)】

1型糖尿病を発症することがあり、インスリン注射による治療が必要になることがあります。定期的な血糖値検査が必要です。急速に進行する特徴があり、吐き気や嘔吐が現れた後、1週間前後で意識障害等が現れるおそれもあります。

【肝機能障害・肝炎】

血液中の肝酵素(AST、ALT、総ビリルビン値など)の数値が基準値より高くなります。定期的な肝機能検査が必要です。

【甲状腺機能障害】

新陳代謝を活発にする甲状腺ホルモンなどを分泌する内分泌器官に炎症を起こして、甲状腺中毒症、甲状腺機能低下症などの甲状腺機能障害を発症することがあります。定期的な甲状腺機能検査が必要です。

【神経障害】

神経に炎症が起こることで、感覚や運動に関わる神経に障害が出る病気です。手足のしびれや痛みなどの症状が現れることもあります。

【腎障害】

腎臓に炎症が起こる腎炎を発症することがあります。むくみや貧血、血尿、発熱などの症状な現れます。

【副腎障害】

副腎機能が低下することで血糖値が下がることがあります。吐き気や嘔吐、体のだるさ、食欲不振などの症状の他に、急性の場合は意識が朦朧とすることもあります。

【脳炎】

脳や脊髄に炎症が起こる病気で、精神障害や意識障害が起こる場合があります。発熱や嘔吐、失神、精神状態の変化などの症状が現れます。

【重度の皮膚障害】

皮膚や粘膜など、全身に広がるような重度の皮膚症状が起こることがあり、全身に赤い斑点や水ぶくれ、ひどい口内炎、粘膜のただれなどが現れます。

【静脈血栓塞栓症】

静脈でできた血のかたまりが血流で流れて行き、他の場所の血管をふさいでしまう病気です。肺の血管が詰まると、呼吸ができなくなることも。皮膚や唇、手足の爪が青紫色や暗褐色になったり、意識の低下や胸の痛みなどが症状は危険信号です。

これら上記の副作用が出たと感じたらすぐに、オプジーボを中止(または休止)して一旦体の回復を図ります。早期発見が大切ですので、少しでも異変を感じたらすぐに医師、看護師、薬剤師に知らせましょう。

■こんな時は医師に相談!

上記の副作用以外にも考えられる副作用があります。

皮膚障害と心臓障害です。皮膚障害は、発疹やかゆみ、白斑や皮膚色素減少症(皮膚が一部白くなる)が現れることがあります。心臓障害は、めまいや動悸、脈拍の異常、意識の低下などが現れることがあります。もし、これらの症状が現れたら、すぐに医師や看護師、薬剤師に知らせましょう。

また、オプジーボ薬剤の投与中または投与後24時間以内に発熱、悪寒、ふるえ、高血圧や低血圧(めまい、ふらつき、頭痛など)、呼吸困難などの症状が出た場合も同様です。少しでも早く知らせた方が副作用の悪化を食い止められます。

■今後の期待

2013年2月、経産省による日本の再生医療や免疫療法の市場予測によると、今後、すべての医療分野の中でも、がんの免疫療法関連の市場が最も大きくなる っていくだろうと発表しました。2020年でおよそ950億円、2030年に1兆円、2050年には2・5兆円という具合です。

これまでの高額な薬の価格は、今後社会的に議論されていくテーマとなるはずです。

オプジーボは、リンパがん、頭頸部がんなどあらゆるがんの種類に効果を示すことが分かってきました。この先、人類ががんを克服でき、img_603f506cf7d47a7f0cc0d47b7ecf4306995292それほど怖くない病気として認知される日もやってくることも夢ではありません。かつてまだ抗生物質が存在しなかった時代では、結核を治療するのに感染症であるにも関わらず外科手術を施していたこともありました。

現在では、飲み薬で治療でき、死亡者もほとんどいなくなったことを考えると、がんも同じように克服できるはずです。

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